スクランブル:暖か~い灯油、家まで配達 大助かり、地域で高齢者支える /広島

1月27日17時1分配信 毎日新聞

 ◇中区の高齢者生協
 寒さが厳しい中、暖房器具に必要な灯油を配達する業者が減り、困っている高齢者が増えている。灯油を購入して家まで運ぶのは、足腰の弱った人には大きな負担。不採算を理由に配達を取りやめる業者に代わって、灯油配達をする市民グループも出てきた。【大沢瑞季】
 「こんにちは、灯油持ってきました」。ひろしま高齢者生協が運営する「支えあいセンターやよい会」(中区基町)の徳永孝雄さん(77)が、18リットルの灯油タンクを持って訪れる。「ご苦労様です、ありがとう」。基町の広島市営住宅に住む田盛智生さん(54)は、認知症の父徳保さん(83)と二人暮らし。父の世話で、灯油を買う時間の余裕がない。
 18リットルの灯油タンクを二つ持てば、ずしりと腰にくる。徳永さん自身も高齢者だが、時には5階まで階段を上って届ける。
 同会は07年12月、基町の空き店舗に、住民から集めた古着や野菜を安く売る店を開いた。同年から灯油の配達を始め、今年は1タンク1800円(灯油代込み)。12~3月の間、依頼は約90回。ほとんどは一人暮らしか老老介護の世帯だ。
 安佐南区長束3の栗原真理子さん(74)も、同会に配達を頼んでいる。一人暮らしで腰とひざが悪く、自分で灯油を運べない。人づてに会の存在を知った。「私以外にも困っている人はたくさんいると思う。寒さに震える年寄りが出てはいけない」と話す。
 ガソリンスタンドや農協などが配達する地区もあるが、サービスのない地区も多い。配達している業者を高齢者が探し出すのも一苦労だ。基町では、以前は米屋が配達をしていたが、従業員の高齢化や採算面などの理由でやめている。
 橋本賢理事長(80)は「最初はお年寄りが灯油に困っているだろうと思って始めたが、今ではもう一つの大切な役割がある」と話す。それは安否確認だ。
 一人暮らしの高齢者は、孤独死の可能性も高い。配達時には声かけや雑談を大事にする。ひやりとしたこともあった。昨年2月、高齢の男性宅を朝10時に訪れても応答がない。夕方、翌日も同じ。管理人と一緒に鍵を開けると、体調の急変で入院していた。橋本理事長は「配達は一つの手段。高齢化が進む今、地域で高齢者を支え、見守りをしていかないといけない」と言う。

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