歴史受け継ぐ管弦楽部 【家と生きる】

◆山口市「旧制山口高校講堂」
 小雨の降る放課後。少し色あせ、どこか懐かしい水色の木造の建物に管弦楽部の生徒が集い、思い思いの音を奏で始めた。1922年に建てられ、文化庁の登録有形文化財にも指定されている旧制山口高校講堂(記念館)。江上嘉昭教頭は「歴史と伝統を感じ、自分もその中の一員であると生徒が感じることができる場所」と語る。

  近代日本を引っ張るエリート育成という使命を負っていた旧制高校。かつての生徒たちは講堂を「国を支える幹になることを誓う」との意味を込め「誓幹堂」と呼び、ここから社会へと巣立っていった。

  円柱と角柱で支えられ、安定感のある正面玄関や、左右対称に塔のようにせり出した屋根の外観には独特の風格がある。内装も、窓や欄干に施された幾何学模様の装飾など、随所に工夫を凝らしたつくりに。各地の旧制高校の建物に共通する様式だったという。

  戦後の学制改革後、しばらくは新制山口高校の卒業式の会場などに使われていたが、75年以降はもっぱら管弦楽部の練習場に。クラリネットを担当する部長の西村朋恵さん(17)は「長い間、色々な先輩がこの場所で演奏をし、自分たちも同じように楽器を吹いている。記念館と同じように自分たちが歴史を作っているといううれしさがある。管弦楽部だけが、ここで練習できるのも自慢です」

  部員たちは「20人以上は上がってはいけない」というルールがある2階部分も含め、階段や入り口、正面ステージなど好きな場所に散らばり、一心に楽譜に向かう。クラリネット、オーボエ、サクソフォン……。様々な音を講堂が受け止め、響かせる。

  「サウンドづくりには最高の場所。卒業生も含め、教室よりここで過ごす方が多いという生徒がいっぱいいる」と、顧問の縄田正規教諭は言う。
(青山直篤)

□■ 旧制山口高校講堂(記念館)■□
  旧制山口高は1919年に創設。22年に完成した講堂は木造2階建て、延べ面積約370平方メートルで、高さが約13メートルある。山口市中心部にある山口高校の正門を入り、左側に立つ。

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