耐震改築の藤沢西高、学校名物を写真集に

藤沢市大庭の県立藤沢西高の校舎や体育館の壁、階段などは、10年間にわたって生徒たちが描いた約100点の壁画が飾る。その校舎と体育館で昨秋、耐震強度不足が判明し、建て替えや大規模補強が必要になった。「学校の象徴が壊される前に記録に残そう」とPTAと同窓会、学校が写真集を作り、17日、完成を発表した。

(山本真男)

  壁画は1998年、同高の美術教師植木孝二さんの指導で始まった。植木さんは若いころ、ニューヨークの街の巨大壁画に出会っていた。最初は美術部から広がり、美術の授業に採用された。

  通りかかる人たちの目をひく東棟外壁の絵は00年から2年がかりで描かれた。熱心な教え方で慕われた植木さんが05年、病気で亡くなった後も、伝統は引き継がれた。

  描く場所は生徒たちが自分で決める。

  東棟は建て替え、西棟と体育館は大規模補強の予定。それでも昨年度、建て替えられる東棟の柱の4面に床から天井まで描いた生徒がいた。そんな情熱をPTAが文化祭でバザーを開いてペンキ代を援助したり、足場を組む資金を同窓会が支援したり、と周囲が支える。

  「校舎が美術館のようになっている。姉が描いた絵を見て、下の子が入学してきたり、卒業した後、在学中に完成しなかった作品を描きに通ったり」とPTAの永井洋一会長はいう。

  写真集づくりはPTA、同窓会、学校の12人で委員会をつくり、今年5月にホームページに提案文を発表した。写真館に撮影を頼み、色があせた作品は当時いた教師が写真を提供した。

  A4判、オールカラーの49ページ。建物の各階ごとに壁画の位置を示した配置図に始まり、人物、動物、風景、デザインなど様々な作品を年を追って紹介する。今年度、制作中の作品も収められた。作品一覧や制作風景の写真、好きな壁画アンケートもある。

  写真集に寄せた文で、東棟外壁に描いた当時の校長は、足場を外した時を「生徒と一緒に下塗りした夏の日々が蘇(よみがえ)り、涙が止まらなかった」と振りかえる。植木さんの遺族は「さらなる新たな壁画を育む資料になる」と記した。

  写真集は2千部作成。学校関係者に実費700円で譲るほか、市内の図書館や地区のセンターに贈呈する。問い合わせは藤沢西高の壁画写真集作成委員会(0466・87・2151)へ。

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