「障害者に普通の生活を」自立支援訴訟きょう和解

障害者自立支援法をめぐる集団訴訟のうち、兵庫訴訟がきょう15日、神戸地裁で和解が成立する見通しだ。福祉サービスの拡充に向け、障害者らの期待は高まるが、新たな制度の内容は不透明なまま。原告の一人でマッサージ業の車谷美枝子さん(58)=神戸市東灘区=は「障害者が普通に生活できる社会になってほしい」と願っている。(三島大一郎)

 車谷さんは先天性の全盲の視覚障害者。全盲の夫と結婚し、2人の子どもをもうけた。しかし、阪神・淡路大震災で自宅が全壊。夫は避難先の体育館で、急性心不全のため亡くなった。

 現在、長女と暮らす車谷さんは「生活はぎりぎり」と話す。毎月の収入は障害基礎年金約8万円と自宅で開く治療院の収入で月数万円。「外食もほとんどしない。貯金などとてもできない」と明かす。

 車谷さんは、週5、6時間の家事援助、月数回の移動支援を利用。買い物などに1人で出掛け、道の側溝に落ちたり、駅の階段から転げ落ちたりした経験もあり、サービスの利用は欠かせない。

 だが、同法の施行で、利用者の所得に応じた負担から原則1割負担に代わり、月6千円の負担が発生した。

 移動支援の利用には時間制限もある。「時間を限られ、その上、費用負担まである。思い切って外出することさえできない」と嘆く。

 和解の成立について、車谷さんは「一歩前進」と評価する。しかし、障害者らが求めるような新制度が実施されるまでには、さらに議論を尽くす必要がある。

 車谷さんは「これからが大変。不安はあるが、もっと障害者のことを理解してもらい、私たちが望むような社会になってほしい」と祈っている。

 【障害者自立支援法】地域での自立と就労支援を目的に2006年施行。福祉サービスの利用料を所得に応じた負担から原則1割負担の「応益負担」へ転換したために批判が集まり、全国14地裁で障害者約70人が違憲訴訟を起こした。昨年の政権交代後に制度廃止が決まり、全国原告・弁護団と厚生労働省は協議の末、今年1月、13年8月までに新制度を実施することなどで合意。各地で順次、和解が成立している。

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