五月病を乗り越える6つのステップ

5月7日11時53分配信 ITmediaエンタープライズ

 ゴールデンウィークが終わるとやってくるものがある。それが「五月病」だ。五月病は、4月に入社した新入社員や配属が変わった社員などが、今までとは異なる環境に入った時に起こりやすい。当初は期待感や緊張感からやる気があるものの、環境が変わり1カ月ほど経過したときに、今までの緊張感やこのままでついていけるだろうかといった不安が生じ、無気力感や不安感、焦りなどが出てくる症状として知られている。

 特にIT業界に飛び込んだ新入社員の場合、学生時代に学ぶ「技術力」以上に、上司や顧客とのコミュニケーションからくるストレスを抱えることが多い。学生時代以上に要求される設計やプログラム品質へのプレッシャー、厳しい納期への対応など、自覚している以上のストレスにさらされてしまう。

 五月病というと「気合が足りない」などの精神論になりがちだが、過度なストレスは心身ともに負担となり、最悪の場合は出社拒否やうつなどの引き金になる場合もある。「単なる五月病だ」と安易に考えずに、きちんと対応しておきたい。

●「五月病かな」と思ったら……

 新しい環境に入り、思うような成果が出ずに「なんでわたしは全然ダメなのだろう……」と自信を無くしてはいないだろうか。そう思うのも不思議ではない。

 ポジティブシンキングという言葉があるように、少し落ち込んだときに「よし、やろう」と自分を鼓舞するのはいい。だが、「やる気が出ないわたし」と「やる気を出そうとするわたし」の差が開けば開くほど、気付かないうちにストレスを溜め込んでしまうものだ。この差が大きい時には、無理にポジティブに考えようとするのは無理があるし、むしろ危険ともいえる。

 このような場合に有効なのが「自分と対話する」という方法だ。同じ出来事を経験しても、それをストレスと感じる人もいるし、感じない人もいる。あなた自身ですら気付いていない「頑張らなければならない」「最初から完璧にしなければならない」などの思い込みがストレスを感じさせるのだ。自分と対話することで、自分の中の「ストレスと解釈した発生源」を知ることができる。そして、「今、本当に無理しなければならないのか」と検証でき、やみくもに不安がる必要がないということに気付くのである。では、そのステップを紹介しよう。

●五月病を乗り越える6つのステップ

1. ストレスに感じ、自信を失っていることを探す

 実際にあなたが感じているストレスを書き出してみよう。「嫌なこと」「先輩や上司の気になる言動」など、思うがままにノートに書き出してみるのもいい方法だ。「ふざけるな!」など汚い言葉を使って遠慮せずに書いてみるのがポイントだ。これにより、頭の中で無意識に解釈していた「何がストレスを感じさせたのか」という本当の理由を意識できるようになる。

2. 「何に無理をしているのか」をまとめる

 書き出した内容を見て、「一言で言うと、今まで何に無理をしてきたのか」をまとめてみる。それによって、あなたが気付かないうちに何に対して頑張ってきたかを理解できるだろう。

3. 不満を口に出す

 大声を出せる場所を探して、実際に言葉に出してみるのもいい方法だ。カラオケボックスや車の中などで思い切り不満を声に出し、すっきりするまで言葉にしてみよう。体の「内」にあるストレスを意識的自分の「外」に出すようにするのだ。大声を出すだけでずいぶんとすっきりできる。また思うがままに大声を出すと、自分の言葉を自分で聞いて、「こんなことに怒っていたのか」と改めて気付き、「たいしたことじゃないな」と思えるようになる。ちなみに筆者は車の中でよく心の中に溜まった老廃物を出している。

4. 無理している自分と対話する

 「嫌なこと」や「過去の場面」を思い出していると、そのシーンが映像(イメージ)として現れたり、頭部や心臓周辺、下腹部などの体の一部に違和感やモヤモヤを感じる場合がある。映像の中に映っているあなたや違和感を覚えた部分に意識を向けて、「何が嫌なの」と子供に話しかけるように聞いてみよう。お母さんになったかのように聞くことが大切だ。頭で考えずに、ふと浮かんできた感覚や言葉を大切にして、あなたの本音と対話をしてみよう。

5. 無理をしてきた自分にねぎらいの言葉をかける

 「今までよく頑張ってきたね」「無理させてごめんね」など、無理せざるを得なかったあなたにねぎらいの言葉をかけてあげよう。ストレスとは、「頑張らなければならない」と思い込んでいるもう一人のあなたが「頑張っている私の存在に気付いて」と訴えてきているのである。それはまるで、かまってもらえずにすねてしまった「駄々っ子」のようなものだ。もう一人のあなたの存在に気付き、ねぎらってあげることで、すねた「駄々っ子」は納得するのである。心の中でつぶやいてもいいが、ちゃんと言葉にして言ってあげよう。

6. 今起きていることで、何が得られたかを考える

 ここまでのステップで気持ちが軽くなったら、今のつらい状況から何を得られたかを考えてみよう。例えば、足を怪我することはネガティブな事件だが、動ける範囲が制限されたことでゆっくりする時間ができた、勉強する時間ができたととらえることもできる。

 物事には表と裏の2つの側面がある。とらえ方ひとつで、目の前で起きている出来事はマイナスにもプラスにもなりうる。プラスの一面が見えてくると、今の状況にも意味があるということが腹に落ちるはずだ。「今、○○になったおかげで△△を得ることができた」といった文章を書き出してみるのもいい。

 この6つのステップにより、あなた自身の感情をコントロールでき、ストレスと上手く付き合えるようになる。

 仕事に慣れず、自分を責めてしまう気持ちはよく分かる。だが、考えてみてほしい。あなたの周りにいる先輩だって、最初から仕事ができたわけではない。かつてはあなたと同じ新人で、何もできなかったのだ。あなたは、仕事で一人前になるための階段を上り始めたばかりである。一歩ずつ着実に上がっていけばいい。

●環境が変わった社員を持つ上司の対応

 新入社員や配属が変わった社員を持つ上司はどうするべきか。彼らは表向きは元気に頑張っているように見えても、今までの環境との間に大きな変化があり、心身ともに緊張状態にあることをまず理解しよう。

 五月病か、と思うような社員がいたら、ぜひ話を聞いてあげてほしい。この時「そうすべきではない」という批判や「その場合はこうしたほうがいい」というアドバイスをしないことがポイントだ。

 わたしの知り合いのカウンセラーは「『話す』ことで、相手は抱えているものを自分から『放す』んですよ」と言う。相手が頭の「内」に抱えているものを言葉によって「外」に出してあげることで、体から悩みが出て行くとイメージするといい。実際、わたしたちは悩み事を他人に話すだけで、すっきりとして癒された感じを得ることがある。あなたも悩んでいるときに「とにかく話を聞いてもらいたい」と思ったことがないだろうか。

 「何でも話していいよ」「そして?」「それから?」と、相手の目を見て、うなずきながら、相手の話を最初から最後まで聞いてあげることが大切だ。「わたしが若い頃は……」という武勇伝は必要ない。

 五月は街の緑が一段と増し、とてもすがすがしい。仕事に対して意欲的に取り組むにはもってこいの時期だ。五月病は「やる気がないことの裏返し」と思われがちだが、決して悪いことではない。悲鳴を上げている自分と上手に付き合いながら、みなさんが街の緑のように成長していくことを心から望んでいる。

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