8月27日12時1分配信 毎日新聞
◇「鎌倉市の許可違法」
鎌倉市岡本2のマンション建設計画に対する市の開発許可を2度取り消した県開発審査会の裁決を巡り、綾瀬市の建設会社が県を相手に裁決取り消しを求めた訴訟で、横浜地裁は26日、請求を棄却した。1度目の裁決後に市が出した2度目の開発許可の是非が主な争点で、北沢章功裁判長は「1度目の裁決は(手続き面ではなく)実体的な理由で許可を取り消しており、市は不許可処分をすべきだった。2度目の許可は違法」と指摘した。
そのうえで、違法な市の許可を取り消した2度目の裁決は適法として、会社側の訴えを退けた。計画を進めるには開発許可を一から取り直す必要がある。
判決によると、審査会は05年12月の裁決で、建設予定地が道路に面していないことなどから市の許可を取り消した。市は06年4月、開発区域が市道に接するよう業者が計画を「補正」したとして2度目の許可を出したが、周辺住民らの審査請求を受け審査会は07年1月、2度目の裁決で再び許可を取り消した。
判決は、審査請求について定めた行政不服審査法の規定から、1度目の取り消し裁決後は実体的内容に関する「補正」は認められず、市も裁決に拘束されると指摘。補正を理由に裁決に反して、市が出した2度目の許可を違法と結論付けた。【杉埜水脈】
◇県建築指導課の話
県の主張が認められたものと考えている。
◇住民ら「原状復帰を」 市長ら「誤り」を認めず
訴訟の舞台となったマンション建設予定地は工事が中断されたまま。工事に伴い、周辺住民が使っていた階段状の市道は破壊された状態が続く。市の開発許可を違法と断じた判決を受け、住民らは「早く原状復帰を」と望むが、石渡徳一市長は「誤り」を認めなかった。
判決後、審査請求で取り消し裁決を得て、訴訟にも県側の参加人として加わった住民の星野芳久さん(73)は「明快な結論で満足している。市の許可が間違いだった。過ちを重ねたマンション計画を終結するべきだ」と話した。安藤久子さん(71)は「もともとあった階段状の市道を、早く原状に戻してほしい」と訴えた。
しかし、石渡市長は報道陣の取材に対し「原告の動向も注視しながら慎重な対応をする」とコメント。金沢政弘副市長も「今まで、いいと思ってやってきた」と話し、判決の「違法」との指摘に正面から答えなかった。
会社側の鈴木智也弁護士は「依頼者と相談しなくては話せない。判決を検討してから今後のことを決める」と述べた。【吉野正浩】