「書の甲子園」として親しまれる第18回国際高校生選抜書展(毎日新聞社、毎日書道会主催)に、高校では珍しい平安朝のかなを基本とした作品を出品し、初の全国優勝に導いた。「例年以上にみんなが努力した結果だと思います」。部員33人と喜びを分かち合った。
大学卒業まで漢字を学んだが、展覧会でかな作品を見て、「日本独自の文化で、細い線にも凜(りん)とした力強さがある」とひかれた。「若い世代に伝えたい」と埼玉県立松山女子高(東松山市)に赴任した00年、部員に勧めて全員で取り組むように。3年目に北関東地区で優勝、昨年は全国準優勝と階段を上ってきた。
「何が課題かを自ら感じ、考えることが大切」。批評を求める生徒には、まず自分の意見を述べさせ、ほめて、やる気を引き出す。同時に人としてのマナーには厳しい。「細かな心遣いができない人に、線の太さなど微妙な加減は分からない。書は人間性の表れです」。書道への一般の関心を広げ、部員の協調性や連帯感を高めようと、音楽に合わせて書き、ダンスをする「書道パフォーマンス」も行う。
来年の目標は、生徒たちが品格のある、今年以上の作品を書くこと。それには指導する自分も成長しなければ、と帰宅後も作品づくりや研究に取り組む。息抜きは愛車の運転だが、「運転中も生徒たちの顔が浮かんできます」。自分を信頼してくれ、書に地道に取り組む生徒たちに活力をもらう。【鈴木賢司】
【略歴】石原裕子(いしはら・ひろこ)さん 「書の甲子園」で優勝した松山女子高書道部顧問。08年度、流派や所属団体を超え優れた書家を選ぶ「埼玉書道三十人展」に選出された。埼玉県熊谷市在住。49歳。
毎日新聞 2009年11月21日 0時00分