2005年暮れに雪崩で全壊した北アルプスの「岳沢(だけさわ)ヒュッテ」の跡地に、新しい山小屋「岳沢小屋」が完成し、23日に開業する。岳沢は、上高地と奥穂高岳を行き来する最短ルートの登山道にあり、山小屋の営業は5シーズンぶり。登山の拠点のほか、遭難救助や安全確保の役割も期待されている。
旧ヒュッテは建物の崩壊直後、小屋主の上條岳人さん(当時69)が交通事故で亡くなった。遺族は資金面や雪崩に対して安全な場所がないことなどから再建を断念した。
一方で、奥穂高岳から上高地に最短ルートで下山する場合、「重太郎新道」と呼ばれるきつい場所を通るので疲れ切ってしまう人が多い。登山者の安全とトイレの確保といった環境面からも再開を望む声が強く、槍ケ岳山荘などの山小屋を経営する槍ケ岳観光(穂苅康治社長)が小屋再建に乗り出した。
階段状になっている旧ヒュッテの敷地を使い、雪崩が屋根の上を滑り落ちて被害を避ける構造にした。建物は3棟あり、上段は毎シーズン建て直すプレハブの宿泊棟(定員30人)、中段は休憩スペースや食堂・売店がある管理棟、下段はトイレ棟。テントの貸し出しもある。
食堂・売店は3連休に合わせて17日から営業を開始。下山途中の登山者らが早速立ち寄り、「木の間から山小屋が見えたときにはほっとし、あそこまで頑張ろうという気持ちになった」「おいしい水が無料で飲めるし、天候が急に悪くなった時のことを考えると安心して下山できる」などと話していた。(深津弘)