地域再生めざしアートイベント「黄金町バザール」

11月17日11時27分配信 産経新聞

 横浜市中区の「黄金町(こがねちょう)」といえば、かつて違法な特殊飲食店が軒を連ねる風俗街だった。京急電鉄「黄金町」駅から「日ノ出町」駅にかけて、最盛期は高架下を中心に200を超えたという違法店は、約3年半前に一掃された。が、特定のイメージは簡単に消えるものではない。

 そんな街でいま、地域再生を目指したアートイベント「黄金町バザール」が開かれている。市が新設・改築した3つのスタジオと、周辺に多く残る空き店舗が会場だ。現代美術、写真、デザイン、ファッション…と多彩なアーティストが参加し、作品の展示販売やワークショップなどを展開している。

 実行委員会でディレクターを務める山野真悟さんは「まずソフトによって街を再生しようという実験的取り組みです」と語る。最近は、間口一間ほどの小さな風俗店跡を生かしたカフェや飲食店も徐々に増えている。周辺住民さえ「怖くて近づけなかった」という元風俗街に、親しみやすいアートやファッションなどを持ち込むことで、明るさや活気を呼び戻したいという。

 限定ショップ「田宮奈呂(なろ)+me ISSEY MIYAKE(イッセイミヤケ)」には、色鮮やかなフェルト素材の巨大人形が所狭しと並ぶ。イッセイミヤケの店舗ディスプレーを手掛けてきたアーティスト、田宮奈呂さんの作品で、今回は特別に販売している。三宅デザイン事務所の恩田眞理子さんは「下見に来たときは正直、街の雰囲気に驚きましたが、意義のあるイベントだと思い、参加した」と話す。

 街に刻まれた記憶も、アートはその表現に取り込んでいく。狭い間口をくぐり、シャワーを横目に階段を上がれば、三畳ほどに区切られた小部屋…。そんな空間を逆手にとった美術家、北川貴好によるアートインスタレーションなども、見応えがある。

 イベントは30日に閉幕するが、会場はその後もアーティストのアトリエやショップ、カフェなどに活用される予定。淫靡(いんび)なエネルギーを発していた地区は、少しずつ新しいエネルギーを蓄え、周辺の街に溶け込み始めている。(黒沢綾子)

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