11月22日16時59分配信 夕刊フジ
女優、森光子(88)が元気だ。主演舞台「放浪記」の全国ツアーも、いよいよ大詰め。名古屋・中日劇場公演(12月5日まで)の楽屋を訪ねた。
「真剣に見ていてくださるお客さまに、どう感謝の気持ちを伝えていいのか。1人ずつお礼をしたい気持ちでいっぱいです」
4時間に及ぶ舞台を終えた森は、両手を合わせてこう言う。
開演を告げるアナウンスが響くと満員の客席は水を打ったように静かになる。舞台袖にいる森にもその空気が伝わる。
幕が上がり、東京・本郷の下宿「大和館」に森が姿を現すと、割れんばかりの拍手が響く。それに応えるかのように、部屋の電灯を付けるしぐさで右足をけり上げ、第2幕のカフェーでは軽快な“どじょうすくい”を見せる。滑舌もよく、自分の生い立ちをしゃべる長ゼリフも健在だ。
観客は一挙手一頭足に前のめりになり、笑い、歓声を上げ、涙をすすっていた。
「カーテンコールでね、一人一人の顔を見ようと首を伸ばしたの。でね、上の方を見ようとしたら、それ以上、首が伸びなくてね」
すべての観客へお礼を伝えるこの所作に会場は物音一つたてない。
でんぐり返しを封印し、今回の大阪、名古屋公演から尾道のセットでは階段を外した。
来年5月9日、89歳の誕生日には、いよいよ、東京・帝国劇場で、単独主演公演2000回の記録達成が控える。金字塔へ森の心を支えているのは“感謝の心”だ。