2月7日16時31分配信 読売新聞
関西のお笑い芸人の登竜門として知られる漫才コンクールで大賞に輝き、一度は漫才の道を志した角田龍平さん(32)が、9回目の挑戦で司法試験に合格し、昨秋から、橋下徹・大阪府知事の法律事務所で弁護士として活動している。
持ち味は、しゃべくりで鍛え上げた話術。異色の弁護士は「依頼者に安堵(あんど)の笑みを浮かべてもらえる弁護士になりたい」と話す。
京都市内の高校3年だった1994年、他校の生徒と漫才コンビ「おおかみ少年」を組み、ダウンタウンらを輩出した今宮戎神社(大阪市)の漫才新人コンクールで大賞を獲得。特別選抜入試で漫才芸を評価され立命館大に進んだ後も、コンビでテレビ番組に出演したり、漫才師のオール巨人さんの付き人を務めたりして、修業を続けた。
転機は95年の阪神大震災と地下鉄サリン事件。テレビに映る被災者の姿に、「舞台上からではなく、困っている人に正面から向き合う仕事に就きたい」という思いにとらわれ、弁護士を志すようになった。
コンビを解消し、大学4年から司法試験に挑んだが、ことごとく失敗した。仕事もせず、実家で勉強に明け暮れる日々。くじけそうになると「好きな漫才を捨てて選んだ道」と気持ちを奮い立たせ、2006年、9回目で合格を果たした。
司法修習中だった翌年、当時タレントとして活躍していた橋下知事の法律事務所の求人を見つけ、「市民の目線を意識する姿勢に共感」して応募。約20人からただ一人選ばれた。
昨年9月に採用されて以降、民事事件を中心に手がける。交通事故をめぐる損害賠償請求訴訟では、負傷した被害者が生活に支障があることを立証しようと、自宅の階段の上り下りに不自由する様子をビデオ撮影し、映像を証拠提出した。「いい加減な仕事はしない」と肝に銘じている。
人懐こい笑顔と軽快な話術が見込まれ、テレビ番組にもコメンテーターとして出演するようになった。橋下知事から「僕のこともネタにしていいから」とエールを送られる角田さんは「元漫才師らしく、テレビでは法律を親しみやすく解説し、依頼者には、信頼に応えられるよう全力でぶつかりたい」と張り切っている。