「旅行福祉士」各地で養成 重度障害者に観光の喜び

6月6日8時18分配信 フジサンケイ ビジネスアイ

 体の不自由な人たちが旅をする際に手助けをする「トラベルボランティア」が注目されている。視覚障害者や歩行困難な人だけでなく、排泄(はいせつ)の介助が必要な重度の障害者を受け入れる団体や、新人研修に取り入れる企業も出てきた。

 未明の東京・築地市場。1本200万円以上するマグロの仲買人による威勢のよい掛け声が響く。競りを見に集まった観光客の中には、車いすの男女と介助者も。排泄の手助けなどが必要な重度障害者の旅の介助をこなす「旅行福祉士」養成講座の参加者たちだ。

 「高齢になり体が不自由になっても、いつでもどこへでも旅ができるようにしたい」とNPO法人(特定非営利活動法人)「ジャパン・トラベルボランティア・ネットワーク」(東京都多摩市)のおそどまさこ理事長が主催する。

 講座では築地市場や、三社祭でにぎわう東京・浅草周辺をボランティアが実際に介助しながら観光。人込みの中でどうやって危険を回避するかや、階段などで特殊なベルトを使って車いすの人を運ぶ方法を学んだ。

 おそど理事長は「旅は介護保険の適用対象外。全国に旅行福祉士のネットワークを広げれば、家族の付き添いがなくても気軽に旅行でき、自立支援にも役立つ」と訴える。

 大手旅行会社も、トラベルボランティアの養成に力を入れる。顧客の7割が50歳以上の「クラブツーリズム」(東京都新宿区)では、旅先での入浴介助やコミュニケーションの取り方などを学ぶ「旅行支援者養成講座」を2006年に開講。講座の卒業生ら約300人がトラベルボランティアに登録している。

 「ネッツトヨタ南国」(高知市)では2000年から、研修中の新入社員がクラブツーリズム主催の「視覚障害者と四国88カ所霊場をめぐるお遍路」にボランティアとして参加している。

 同社はトヨタ自動車が全国290の販売店を対象にした顧客満足度調査で10年連続日本一に。採用担当の結城貴暁さん(32)は「介助だけでなく人とのつながりや感謝を学んだことが接客や職場での助け合いに生かされている」と話している。

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