築50年の集合住宅を「丸ごと」改造し、高齢者向け住宅や二世帯住宅などに「変身」させる実験に、都市再生機構(UR都市機構、本社・横浜市)が取り組んでいる。東久留米市のひばりが丘団地での工事が終わり、13日から一般に公開される。(松村康史)
URによると、全国でURが管理する賃貸住宅は約76万戸。その6割は昭和40~50年代前半に造られた団地で、老朽化が著しい。現在、各地で高層住宅への建て替えを進め、空き地を民間に売却するなどしているが、今回は住棟を壊さないで「再生」させるための実験に取り組んだ。
「ルネッサンス計画1」と名付け、ひばりが丘団地で取り壊す予定の3棟を「実験台」にした。少子高齢化や環境への配慮など、多様なニーズに応える住宅に造りかえるねらいで、UR都市住宅技術研究所(八王子市)が中心となり、竹中工務店と東京ガスが協力した。
3棟はいずれも、1959年に建てられた鉄筋コンクリートの4階建て。階段を軸として両側に住戸が配置された「階段室型」とよばれる様式で、各戸は2DK、約35平方メートルだ。
うち1棟は階段室をつぶしてエレベーターを設置、各階に共用廊下を新設した。住戸内も段差をなくすなどバリアフリー化して、高齢者向けに改造した。
ユニークなのは複数の住戸をつないで一体的に改修した事例。(1)同じ階の住戸間の壁を壊して広くする(2)上下の住戸を階段でつなぎメゾネット化する、などの方法で、高齢者の2人暮らしや2世帯同居、子育て世帯、単身者やDINKS向けといったさまざまな例を提示している。
ベランダのフェンスのパネルに集めた太陽熱で湯を沸かす給湯暖房機を備えた「環境負荷低減住宅」のモデルルームもある。
改造にかかった費用は、古い住棟を壊して新築する場合の8~9割。コストを抑えることが課題の一つという。
URでは「再生技術を現在の団地居住者向けの建て替え計画に組み入れることは難しい」としており、主に新たな事業に活用していく方針。近く、古い住棟を民間業者に売却・賃貸し、新しい集合住宅や子育て施設、高齢者施設に変身させる事業を始める。
現地見学は完全予約制で、10月中はほぼ満員。11月から来年3月まで、毎週火・木曜に公開する。ホームページ(http://www.ur-net.go.jp/rd/rn1)から申し込む。