世界中で『環境』に対する意識が高まる中、住宅最大手の積水ハウス は、第4世代の“あかり”として注目を集めているLEDを住宅に取り入れ、革新的な住空間の提案をスタート。その第一弾として、12月5日に関東・住まいの夢工場(茨城県古河市)に全灯LED照明のモデル住宅「くらしのあかり館」をオープンさせた。
LEDは、長寿命、省エネ、さらに小型でありながら感度や制御性が高いという特性を持ち、携帯電話やデジタルビデオカメラ、道路表示器の表示用としてなど、幅広い分野で活用されている。一般家庭部門でのCO2排出量削減も大きな課題となる今後、政府は平成24年をめどに白熱灯廃止の方針を掲げており、一般住宅においても本格的なLED普及に向けた動きに拍車がかかりそうだ。
そうした状況の中、同社は今年の春から販売を強化している環境配慮型住宅「グリーンファースト」の新たなオプションとして、長寿命で地球環境にもやさしいLED照明を積極的に採用。全灯LED照明にすることで、従来の白熱灯・蛍光灯併用の一般的な住宅と比べ、照明を利用する際のCO2排出量と電気代をともに78%削減できると試算している。
今回、全灯LED照明を用いたモデル住宅の第一号としてオープンした「くらしあかり館」では、省エネ、長寿命という観点からだけではなく、さまざまな生活シーンにあわせた住空間の演出を提案している。同社の空間照明研究の成果とLEDの特性を融合し、住宅メーカーならでは視点で、時間によって変わる生活シーンに合わせて照明演出を工夫。例えば、食事のシーンでは、食材や食器を際立たせる点光源を追加し食卓をおいしく演出したり、主寝室では、同社独自の睡眠設計に基づき、生体のリズムを整える光を確立。また、階段に埋め込まれた小型のLEDライン照明が足元をさりげなく照らしたり、深夜のトイレは必要なあかりだけにするなど、状況や時間に合わせたあかりを設定。さらに高齢者の視覚特性に対応した間接照明で目にやさしい環境を設定するなど、ユニバーサルデザインも考慮した“あかり”環境を実現している。
このようなLEDによる住空間演出は、同社と照明メーカーとのコラボレーションにより実現した。照明メーカーが販売する器具を住宅メーカーが採用し取り付ける従来の形態から脱却し、両社が企画・開発段階から協業することで、室内を照らす全般照明には不向きとされていたLEDを、壁や天井全体を照らす間接照明方式を採用することで主照明として利用できる光環境を作り上げた。暮らすための明るさを確保するというものではなく、建築と一体化し、季節や時間によって変化する生活シーンに合わせた“あかり”を確立したことで、革新的な住空間を演出することに成功したのだ。
同社は、住宅業界初のエコ・ファースト企業として、「グリーンファースト」をはじめ、様々な環境に配慮した事業を展開している。今回の次世代を見据えたLED照明計画からは、照明器具が空間にあるという発想ではなく、どういう空間、シーンを演出したいかを前提に、“あかり”を空間デザインの一要素とするとのコンセプトが伺える。エコはもちろんだが、一歩踏み込んだ、住宅会社ならではのこだわりを持ち、“あかり”をコンサルティングしようとする同社の新たな挑戦が、住宅空間のこれからをどう変革させていくか期待されるところだ。(編集担当:北尾準)