出火当時、猛煙の恐怖を語る 浜松・マージャン店火災発生から1カ月

4人が死亡、3人が重軽傷を負った浜松市中区高丘東のマージャン店「金ちゃん」の放火とみられる火災は、17日で発生から1カ月。2階の隣り合った卓でマージャンをしていた8人の明暗を分けたものは何だったのか。店内から避難して無事だった客の男性は、迫り来る猛煙の恐怖を振り返った。

 「煙を吸って、ど苦しかった。だから死んでもいいと思って息を止めたんだ」

 1階に降りて火災に気づいた従業員の「火事だ」の声で、別の従業員が階段へ向かった。男性も後に続いた。従業員は二、三歩降りたところで立ちすくんでいた。煙がすごい勢いで上がってくる。

 「おえっ」。2人とも、もろに煙を吸い込んだ。直後、風船が割れるくらいの音量で「バン」と破裂音。店内は真っ暗になった。男性は呼吸を止めて約4メートル離れた窓へ。従業員も懐中電灯を探しだし、先を照らしながら男性に続いた。

 後に男性は、この従業員も呼吸を止めて避難していたことを聞かされた。「2、3回吸ったら助からない。明かりがついているうちにそう気づいたから、巻かれずに済んだんだ」と男性は話す。

 位置的には、焼死体で見つかった3人が囲む卓の方が窓に近かった。約1・5メートル、大またで二歩の距離だ。それでも3人とも、卓のそばで倒れていた。「大量の煙を吸って倒れ、焼死した」。司法解剖の結果も、暗がりの中、襲ってくる煙の恐ろしさを物語る。

 偶然も運命を分けた。男性によると、窓から脱出した客ら4人のうち、2人が転落していた。1人は全身強打による多発損傷で死亡した村上雍矩(やすのり)さん(64)。

 男性が地面に倒れる村上さんを介抱しているすぐ横に、別の客が落下してきた。「たまたまそこに自分のミニバイクが置いてあって、彼はそれがクッションになって助かったと言っていた」

    ◇

 浜松中央署捜査本部は放火の疑いが濃いとみて、これまでに延べ2100人の捜査員を投入。現在も1日80人体制で捜査を続けている。店の従業員や常連客ら約100人への聞き込みを終えた。

 情報提供を求める電話=フリーダイヤル(0120)211038=へは2件しか寄せられていない。捜査関係者は「ささいな情報でもいいのでお願いしたい」と話している。

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