参院選岩手選挙区(改選数1)では、4候補が、暑さの中県内各地で熱弁を振るい、有権者に支持を求めている。各候補の横顔を紹介する。(届け出順)
◇野球でタフさや忍耐を習得--高橋雪文氏(40)自新
盛岡市議、県議だったこの12年、ほぼ休んでいない。「じっとしていると申し訳ない」と仕事の虫を自認する。タフさや忍耐は捕手として小学から続ける野球で得た。生後7カ月で心臓病、3歳で川崎病にかかった体の弱さも克服した。
政治を志した原点は、中国や欧米など10カ国以上を旅した学生時代にある。ある途上国で、しきりに日本のことを聞かれた。先進国入りした国から学び、家族に少しでも楽な生活をさせたいからだという。自分の学友は給料や福利厚生を基準に就職先を選んでいた。「これでは日本がおかしくなる」。97年に都議選に挑み、99年に故郷で市議になった。
信条は保守。出馬の決意も「保守から大きく逸脱し、理念なき政治がまかり通ってきた」と思うからだ。座右の銘は「義を見てせざるは勇無きなり」。
妻と1女2男。雪研究家の祖父喜平氏の影響で父子の名に「雪」がつく。直木賞作家の高橋克彦氏は親類。【狩野智彦】
◇赤いネクタイに再選願う--主浜了氏(60)民現(1)
名刺入れの中に「宝物」を忍ばせている。昨年9月16日、鳩山由紀夫前首相を指名した参議院の投票用紙。3枚配られたうち、予備の1枚だ。政権交代の瞬間に居合わせた記念として、持ち歩いている。「一生忘れられない」と振り返る。
1973年、県庁に入庁。広報広聴や農林水産など、さまざまな行政分野で経験を積んだ。「県職員は専門分野に分かれていたが、今はすべての問題に責任を負い、国政に反映しなければ」と顔を引き締める。
趣味は大学時代に始めたサイクリング。トレーニングを兼ねた滝沢村の自宅から網張温泉までの往復は、そう快で好きなコースだ。
選挙戦は、白いワイシャツに赤いネクタイ姿で臨む。6年前に出馬する際、当時、民主党県連代表だった達増拓也知事から「パワーカラーですよ」と勧められて以来、守ってきた。「気持ちも鼓舞され、結果(政権交代)も出た」。赤いネクタイに再選の願いを込める。【山口圭一】
◇平和の気持ち、人一倍強く--伊沢昌弘氏(63)社新
普天間飛行場の移設問題に伴う社民党の連立離脱で急きょ出馬を決めた。平和を思う気持ちは人一倍強い。
75歳で亡くなった父親は晩年、認知症を患っていた。「敵機襲来」と叫び、自宅の近くを流れるドブ川に飛び込み、身を潜めた。太平洋戦争で徴兵され、南方に送られた。「人を殺すのも、殺されるのも嫌だ」。幼いころ、父親から聞かされた言葉をかみしめた。
岩手大工学部で化学を学んだ後、会社員を経て、県職員に。化学の専門家として公害行政に取り組んだ。県職員労働組合の役員から政治家に転身。市議、県議と活動する中、社会保障や環境問題で壁にぶつかった。「国政の場で言わないと、どうにもならない」。今回で、国政には3度目の挑戦となる。
毎朝、朝食と昼食の弁当を作る「弁当男子」。自らサバを締めることも。トランペットが中学時代からの趣味だ。十八番は「夜空のトランペット」。休日、自宅の階段で響かせる。【山口圭一】
◇リラックスの方法は読書--瀬川貞清氏(60)共新
ぼくとつながら、熱い口調で説く。「国民の要望に基づかない政治は早晩つぶれる」。米軍基地や政治とカネの問題を抱える民主政権を批判する。
岩手大在学中に社会変革運動にかかわったことがきっかけで政治家を志した。県内各地を歩き回り、大企業や大型スーパーの進出によって商店街や地域が壊れていく現状を目にし、心を痛める。「もうからなければすぐに撤退してしまう大企業のやり方は許されない」と、1次産業中心の岩手に根ざした経済政策の必要性を訴える。
論理的に考えることが得意といい、「石橋をたたいても渡らない」とからかわれることもあるほどの慎重派。だが、「国民のために必要な決断は迅速にしたい」と話す。
最近一番やりたいことは修験道の研究。先祖に修験者がいるが、住民から相談を受け医術や祈とうをする役割が自分自身に通ずるという。「本を読むのがリラックス法」と言う大の読書好きでもある。【山中章子】