<わかやまスコープ>お年寄り スポーツ元気人

 16日は敬老の日。県内では、4人に1人以上が65歳以上の高齢者だ。介護や医療の問題が話題になりがちだが、驚くほど元気なお年寄りも多い。若者顔負けにスポーツに取り組む人たちの姿を追ってみた。(伊藤晋一郎、落合宏美)

 9月上旬、和歌山市福島の紀の川河川敷に、50~80歳代の男女9人が集まった。中高年でつくる「和歌山マスターズ陸上競技連盟」のメンバーだ。月数回、和歌山市内の公園に集まり練習会を開いている。

 「ほな、走りましょか」。副理事長の関めり子さん(64)が呼び掛け、まずはトラックを1周ランニング。次に準備体操が始まった。「よう関節伸ばそうや」。声を掛け合ってけが防止に努める。

 その後、種目に別れた。砲丸投げに取り組んでいたのは、最年長の浅野文男さん(82)。2年程前に友人に誘われて同連盟に入会。約4キロある球を力を込めて前へ投げる。

 学生時代は野球、就職してからもソフトボールなどに打ち込んだスポーツマンだが、妻を亡くした16年前を境に、本格的な運動から遠ざかっていた。「トレーニングしてたら病気もしにくくて、今は血圧が少し高いぐらいで健康」と笑った。

 一緒に練習した岩崎竹晴さん(80)は1996年から陸上競技を続けている。昨年5月に約7時間に及ぶ大腸がんの手術を行い、抗がん剤治療も経験したが、今年2月には練習が出来るようになったという。「病院の先生も驚異の回復力と言ってた。トレーニングしてたおかげ」。

 トラックでは樫葉正亮さん(72)が黙々と走っていた。30歳代で始めたマラソン。最初の頃は2~3キロ走ると息を上げたが、最近は年1、2回フルマラソンを走っている。

 毎日午前4時30分に起き、10キロをジョギングする。「年取るほど走れる距離が長くなっている。トレーニングさえすれば年齢は関係ない」。3年半前、右足の関節を痛めてしまったという。「体にガタがくることは仕方がない。記録などにこだわりすぎず、自分のできる範囲で体を動かすのも大事。夏場は熱中症が怖いから昼間は走らん」。

 約1時間の練習も終わりに近づき、全員が再び集まって体操を始めた。元気の秘訣(ひけつ)を聞いてみたら「練習後のビールやね!」と一斉に同じ答えが返ってきた。

 県体力開発センター(和歌山市中之島)では、30年以上前から高齢者向け体操教室「アスレティックシルバー」が開かれている。

 木曜日の午後、身軽な服装の60歳代から80歳代の男女8人が集まり、健康運動指導士のかけ声でスタート。まずは肩から腰、脚まで全身の軽いストレッチ。15分ごとに水分補給を挟みながら、徐々に内容はハードになり、指導士が時折、「痛みのある方は無理しないで」と声をかけ、マットに寝ころんだり、ストレッチ用のポールを使ったりしながら全身の筋肉や関節を動かし続ける。最後はペアで、両手を使ってじゃんけんをしながら横歩きをし、頭の体操も兼ねる。

 同センターによると、衰えやすい脚の筋肉と全身の関節、肩、首を中心に動かすメニューを組んでいる。そして、教室が「同世代が集まる社交の場にもなっていること」が、参加者の元気の秘訣(ひけつ)になっているという。

 通い続けて28年目の鳴神董夫さん(81)は「なかなか一人では続けられない。ここが唯一の楽しみ」と笑う。北村恵美子さん(81)も「なんてことない世間話でもしながらみんなで一緒にできるのがいい」と話す。

 短時間でも外に出て体を動かし、人と交流することが、生き生きした毎日を支えているように思えた。

<まずは歩くことから>

 県立医科大が運営する予防医学の研究拠点「みらい医療推進センター げんき開発研究所」(和歌山市本町)で運動指導を行っている馬渕博行・研究主任(トレーニング科学)に、高齢者が運動に取り組む際に気をつけるべきポイントを聞いた。

 運動をしない高齢者は、筋肉の量が落ちていることが懸念されます。感覚神経や運動神経にも衰えがあり、反応が鈍くなって衝撃で体のバランスを崩すことは若者に比べて多くなります。そんな時に体を支える力を保ち、転倒を防ぐことが大切です。

 衝撃で大腿(だいたい)骨など主要な骨を折ってしまうと、寝たきりになってしまうこともある。そんなことを防ぐためにも、一定の運動をして筋肉量をしっかり保つことが重要です。

 運動をしていない高齢者の方は、まず意識的に歩くことから始めてみてはどうでしょうか。例えば、普段より遠いスーパーをあえて選んで歩く。バスや車を使わずに歩くといったことから始めてください。慣れてきたら坂道を選んだり、歩道橋の階段を上ったり、徐々に負荷をかけていけばより充実した運動になります。

 ただ、やみくもに運動をしたらいい訳ではありません。まず、持病を知ること。運動を始める前には必ず主治医に相談して、どの程度、自分の体が運動に耐えられるかを確認して、無理のない範囲で取り組むことが大切。就寝中は多くの汗をかいていますから、早朝にジョギングなどを行う時は、必ず水分を十分に取ってください。熱中症は夏以外にも起こりえます。自分の体の変化に敏感になって、運動量を調整することが必要です。

 2011年に発足した「和歌山マスターズクラブ」(事務局・和歌山市)は、高齢者がスポーツを気軽に楽しむための取り組みを行っている。

 陸上、水泳、ソフトテニス、ソフトボール、ハンドボール、ベンチプレスの県内6競技団体が共同で設立。後にゴルフも加わり、それぞれの競技団体は毎年1回、「マスターズ大会」と銘打った大会を開催。さらに、全国大会などで優秀な成績を残した選手の表彰も行い、スポーツに取り組む高齢者の励みになっているという。定期的にスポーツ医学に詳しい医師による講演会なども開いている。

 理事長を務める鴻池清司さん(76)は「体を動かしたい高齢者を組織として支援していきたい」と話している。

2013年9月15日

  読売新聞)

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