11月26日8時6分配信 産経新聞
高齢者の歩行を補助するステッキ(つえ)がおしゃれに進化している。欧州では紳士の小道具として使われてきたステッキ。日本では地味な印象が強かったが、最近は鮮やかな色彩をはじめ、毛皮やクリスタルガラスをあしらった華やかな商品も登場してきた。ファッションの一部として、洋服や季節に合わせて楽しむ人も増えているようだ。(中曽根聖子)
≪売れ筋は折りたたみ式≫
東京都中央区の三越日本橋本店には、1万円台から150万円まで約300種類のステッキが並ぶ。本体の素材は、アルミやカーボンをはじめ、紫檀(したん)、黒檀(こくたん)といった天然木などさまざま。持ち手部分のデザインや色柄も多彩だ。動物の頭をかたどった銀細工を施した高級品を2本目、3本目として購入する人も多い。
売れ筋は2、3万円台の折りたたみ式。カーボン製で傘よりも軽く、疲れたときや階段の上り下り時に使用するのに便利だ。ショップマスターの小口浩司さんは「長さは使う人の身長に合わせて切って調節できるので、重さや持ち手の形など自分に合うものをじっくり選んで」と呼びかける。
≪いすに早変わり≫
「着物に似合うステッキが欲しい」「人と違うものが持ちたい」…。2年前にオープンした、数少ない専門店「つえ屋」(京都市中京区)には、個性的なステッキを探す顧客が全国から訪れる。
常時1500種類をそろえる同店の売れ筋は、オパールなど宝石をあしらったものや、伝統工芸士による手塗り漆など高級感あふれる商品。また、夜道でも目立つようにLED(発光ダイオード)ライトを組み込んだ商品や、ワンタッチでいすに早変わりするユニークな商品も人気だ。
「従来のつえには地味なイメージがあって、『自分にはまだ早い』『年寄りっぽい』と抵抗を感じる人もいた。贈り物として喜ばれるおしゃれな品物をそろえることで、ファッションアイテムとして注目するお年寄りが増えた」。代表の坂野寛さんは、こう話す。
≪ミンクやワニ革≫
従来のステッキの概念を一新したいと、今月からステッキの製造、販売に乗り出したのは、福祉機器などを扱う「NORICO」(東京都港区)。仙台市でセレクトショップを経営する同社社長の鎌田典子さん(38)は4年前、難病の「特発性大腿(だいたい)骨頭壊死(えし)症」と診断され、歩行時にステッキが必要になった。このとき、国内で売られているステッキは実用性を重視したものが主流で、流行の洋服に合うデザイン性の高いものが少ないことを知り、自らステッキを作ることを決意したという。
鎌田さんはミンクの毛皮や牛革など高級素材を使った商品を次々と開発。価格は5万8800円からで、中でもオーストリアのスワロフスキー社製クリスタルガラスを720粒もちりばめたステッキ(12万6000円)は芸術品のような美しさだ。西武百貨店有楽町店(中央区)では25日から、同社製品の取り扱いを開始した。
同社はオーダーメード商品も扱い、鎌田さんは「持っているだけで気分が明るく、外出が楽しくなるような商品を作っていきたい」と意気込んでいる。