参拝もバリアフリー 飛騨一之宮水無神社

高山市一之宮町の飛騨一之宮水無神社は、参拝に訪れた高齢者や体の不自由な人が階段に苦労することなく、境内から本殿にスムーズに向かうことができる通路を造った。

 同神社では、境内から本殿へ急な階段が続いている。通路は社殿に合わせた屋根付きの木造で、長さ約30メートル。また、神社駐車場から通路の入り口まで舗装し、車を横付けできるようにもした。

 利用ができるようになった1日には、氏子総代や工事担当者ら約20人が集まり、清め払いをした。神主の牛丸大吾さん(49)は「高齢化や冬は雪も降るので必要だと思う。これからもいろいろな方に参拝に来てほしい」と話していた。

 同神社は正月3が日には県内外から7、8万人の参拝者でにぎわう。

 (並木智子

階段に巨大広告 市選管 投票を呼びかける 川崎駅

二十五日投開票の川崎市長選と参院補選の広報活動が一日、市内で一斉に始まり、JR川崎駅東口と地下街「アゼリア」を結ぶ階段には、市長選啓発キャラクターに起用された横浜市出身のアイドルタレント南明奈さん(20)の巨大なステップ広告が登場した。

 階段下部の十九段に分割して張られた広告は、遠目に見ると一枚の絵となり、南さんが愛称の「アッキーナ」にちなんで「あなたの一票、おっき~な!」と、投票の大切さを呼び掛ける。

 同駅では東西自由通路のコインロッカーにも全面広告を出した。ともに川崎市の選挙啓発では初めての試み。市選挙管理委員会は「複数の段を使う大きなステップ広告は珍しいのでは」と、啓発効果に期待している。 (加賀大介)

天野・福岡 悲願の初制覇 レスリング成年男子84キロ級 新潟国体

第64回国民体育大会「トキめき新潟国体」(新潟国体)第5日は30日、新潟県で行われ、卓球の少年女子は世界選手権シングルス8強の石川佳純(四天王寺高)を擁する大阪が3連覇した。少年男子はともに世界選手権代表の松平健太(青森山田高)丹羽孝希(青森山田中)の青森が連続優勝を13年に伸ばした。公開競技の高校野球硬式は県岐阜商(岐阜)が都城商(宮崎)を11-4で退け、62大会ぶり2度目の優勝を果たした。レスリングの成年男子グレコローマン66キロ級は清水博之(滋賀・自衛隊)が、北京まで3大会連続五輪代表の笹本睦(神奈川・綜合警備保障)を決勝で破り優勝。ボートの成年男子シングルスカルは、北京まで4大会連続五輪代表の武田大作(愛媛・ダイキ)が勝った。サッカーの女子決勝は岡山が新潟を3-0で破り、初優勝した。

    ×      ×

 ●上り調子でロンドン目指す

 悲願の国体初制覇だ。レスリング成年男子グレコローマン84キロ級で福岡の天野雅之(中大3年)が頂点に立った。「ロンドン五輪への道を進みたい」。6月の全日本選抜選手権は3位、9月の全日本学生選手権はフリーで準優勝。3、2、1と階段を上った男は自信を持って言い切った。

 最大の難関は準決勝だった。埼玉の伊藤諒(自衛隊)は全日本選抜で準決勝、昨年の全日本選手権2回戦で負けた相手。その強敵に2-0で快勝した。「ここを勝って波に乗れた」。決勝は第3ピリオドにローリングでポイントを奪い、そのままフォール勝ち。「焦らずに相手のスキがつけた。自分の思う展開に進めることができた」と会心の試合運びを見せた。

 東福岡高3年時の国体は2位に終わった。「日本一」を目標に、ヘルシンキ五輪金メダリストの石井庄八氏、総合格闘技界のスター、桜庭和志らを輩出した中大レスリング部で技を磨いた。昨年の世界ジュニアは5位。国際舞台でも実績を残した。「12月にある全日本選手権も勝ちたい。そのために明日からまた練習です」。表情を引き締め、「2冠」を誓った。

=2009/10/01付 西日本スポーツ=

ポニョの「鞆の浦」工事差し止め…景観保護優先

万葉集に詠まれた景勝地で、映画「崖(がけ)の上のポニョ」の舞台になったとされる広島県福山市の鞆(とも)の浦で、県と市が進める埋め立て・架橋事業をめぐり、反対する住民ら159人が県知事を相手取り、埋め立て免許の交付の差し止めを求めた訴訟の判決が1日、広島地裁であった。

 能勢顕男裁判長は「鞆の浦は国民の財産で、免許が交付されれば、住民が日常的に恩恵を受けている景観利益について重大な損害が生じる恐れがある」と原告の主張を全面的に認め、知事に免許を交付しないよう命じた。

 改正行政事件訴訟法に基づき、景観利益を理由にして公共事業が事前に差し止められるのは初めてで、開発と景観保護のあり方に影響を与えそうだ。

 判決で、能勢裁判長は、「鞆の浦の景観は歴史的・文化的価値を有し、国民の財産というべき公益で、事業が完成した後に美的景観を復元することは不可能」と言及。その上で、埋め立て・架橋事業が景観に及ぼす影響を「決して軽視できない」と述べた。

 県が策定した事業計画については、「周辺の道路事情は悪く、改善の必要性は認められるが、事前調査や検討が不十分で、景観の保全を犠牲にしてまで事業をしなければならないものか、大きな疑問が残る」と批判した。

 また、埋め立て免許の交付は、瀬戸内海の景観保全を定めた瀬戸内法に照らしても、「裁量権を逸脱した違法な行為にあたる」と指摘。「架橋が完成すれば(鞆の浦の)景観が大きく様変わりし、美しさが損なわれ、文化的・歴史的価値が大きく低減する」とした。

 県側は裁判の中で、高齢化と過疎化が進む町の再生に事業は不可欠で、交通渋滞の解消や高潮被害対策などのメリットを主張。景観利益については、「具体的にどの原告が、どの範囲の場所で景観利益を有するか、全く証明されておらず、利益があると認定できない」と反論していた。

 判決では、原告159人のうち、地元の鞆地区から転居するなどした19人については訴えを却下した。

 埋め立て・架橋事業は1983年12月、県が策定。鞆港の沿岸約2ヘクタールを埋め立て、駐車場やフェリー桟橋などを整備し、港を横切る長さ約179メートルの橋を架ける。総事業費は約55億円。知事が2008年6月、国に埋め立て免許を認可申請。当時の金子国土交通相は「国民の同意を取り付けてほしい」と認可に慎重な姿勢を示していた。

 ◆鞆の浦 瀬戸内海の中央部にあって、古くから潮待ちの港として栄えた。歌人・大伴旅人が訪れて詠んだ歌が万葉集に収められ、江戸時代に寄港した外交使節団・朝鮮通信使は「日東第一形勝」(日本で一番の景勝地)と称賛した。

 近世の港湾施設の「常夜燈」(灯台)、「雁木」(階段状の船着き場)、「焚場」(船の修理場)、「波止」、「船番所」(船舶の見張り場所)が残っているのが特徴。世界遺産候補地を調査するユネスコの諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)は、総会で2回、埋め立て・架橋事業中止を求める決議を採択している。

(2009年10月1日11時16分 読売新聞)