11月12日13時5分配信 VARIETY
『007/慰めの報酬』は、2週間前に公開されたすべての国で1位を獲得。米公開は14日(金)だが、現時点ですでに世界興収が1億6000万ドルの大ヒットだ。主演のダニエル・クレイグがAP通信のインタビューに答えた。
イギリス出身の40歳。いまでこそ笑い話だが、前作『007/カジノ・ロワイヤル』で初めてボンド役に抜擢されたときは、ボンド・ファンの攻撃が激しかった。それまでのボンド役、ピアース・ブロスナンのほうがふさわしいと言われたり、クレイグの髪がブロンドだったことも「イメージに合わない」と批判の対象になった。
「まるで、けんかを売られているみたいでしたね。もちろんその情熱はすごくわかります。ファンにとって、ボンド映画はとても大切。しかし僕にとっても大切だった。だから自分が場違いなところにいるという感じはしませんでした」と当時を振り返る。「批判に左右されるのも違うとも思いました。まだ不満な方もいるかもしれませんが、全員を満足させるのは不可能ですからね」
10代のころはイギリスのNational Youth Theatreに所属し、90年代初期からロンドンの舞台に立つようになった。やがてテレビや映画に移行し、『ロード・トゥ・パーディション』や『ミュンヘン』などに脇役で出演。『レイヤー・ケーキ』や『Jの悲劇』などの小品では主役を務めるようになった。
『トゥームレイダー』のような娯楽アクション作品への出演はあったものの、どう見てもボンド映画のような大作の主役を張るような経歴の持ち主ではなかった。しかし、本作の製作者たちはまったく違う見方をしていたようだ。「スクリーンに彼が登場するたびに目が離せなくなるんです」とプロデューサーのバーバラ・ブロッコリは語る。「ものすごい存在感とカリスマ性を放つんです。そしてあの青い目! 私たちの間では、初めから彼で間違いなしと思っていました」と抜擢の経緯を語った。
監督のマーク・フォスターも、依頼を受けたのはクレイグと仕事がしたかったからだという。「ボンド・ファンがボンドのイメージに合わないと批判しているのも知っていました。でも、彼は本物の役者。確かに大変勇気のある選択だったと思いますが、非常に正しかったと思います」
クレイグ自身、ボンド役は自分には合わないと思ったという。「お話をありがとうございます。でも、いい人が見つかるといいですね、という感じだった」と回想。「でも、バーバラがずっとあきらめてくれないんです。最後に提示してきた脚本を読んだら素晴らしかった。こんな良い本を断ることはないと思った」
そして『カジノ・ロワイヤル』は大成功。その後は、『インベージョン』や『ライラの冒険 黄金の羅針盤』などに出演、成功の階段を上って行く。
『慰めの報酬』のストーリーは、前作『カジノ・ロワイヤル』の続きで、復しゅうの鬼と化したボンドがやみの団体を捜索する。同じく復しゅう心に燃える女性(オルガ・キュリレンコ)とチームを組むことになり、偽の環境保護活動家で南米の水を買い占めようと企む男(マチュー・アマルリック)を探し出すが……。
いつものボンドの「お約束」がほとんどないのも話題のひとつ。トレードマークのマティーニも飲まないし、自己紹介の決めゼリフ「ボンド。ジェームズ・ボンド」もない。
「イメージを新しくする必要がありました」とクレイグは説明する。「リストをチェックするように、よし“マティーニ”はやった、決めゼリフもやった……と、こんな感じでやったとしたら、まるでボンド映画のパロディになってしまいます。」
「『オースティン・パワーズ』の影響もあるでしょう。あれは、大変笑えるシリーズでしたが、影響は大きかった。ボンド映画のパロディという新たなジャンルを作りだしてしまったのですから。だから、本物のボンド映画ではそれとは違う新しいことをしなければならなくなった。もちろん、それもすぐにパロディにされてしまうと思うけれど……」
目を見張るようなアクションも話題だ。アクション映画出身ではないが、フォスター監督はカーチェイス、爆発、体を張った逃亡や戦いのシーンなどをふんだんに盛りこんでいる。
クレイグがけがをしたのも無理はない。右肩の負傷で腕をつっていたし、スタント中、顔をけられ8針も縫う傷も負ったという。指の皮膚を切ってしまい、あわてて救急室に駆け込んだこともあり、けがの度にゴシップ誌の見出しを飾った。「ボンドののろいだ、と言われていました」とクレイグ。「あるとき、セットで大変な事故が起こり、スタントマンが重傷を負ってしまったんです。今は元気になってくれて、本当によかった」
日本公開は09年1月、東京・サロンパス ルーブル丸の内ほかで全国ロードショー。