森光子「よくやったね」放浪記イヤー完走

12月6日9時45分配信 日刊スポーツ

 森光子(88)のライフワーク舞台「放浪記」が5日、名古屋・中日劇場で千秋楽を迎え「放浪記」イヤーを完走した。1~3月の東京・日比谷シアタークリエ、4月に富山、5月に博多座、10~12月は大阪・名古屋と、61年の初演以来最長の半年間に及ぶ「放浪記」づけの年で、通算上演回数は1995回になった。今年だけで137回演じた森は「『放浪記』で明けて暮れた。『よくやったね』という気持ちです」と振り返った。
 1995回目の「放浪記」を演じ終えた森は「20代が4人来ました」とちゃめっ気たっぷりな言葉で記者たちの前に現れた。3時間50分の上演時間でほとんど出ずっぱりだが、疲れはまったくみせず「今日、せりふを間違いかけてびっくりしました。『3円50銭』と言うところを『3万5000円』と言いかけたんです」。未遂に終わった「言い間違い」を明かす余裕ぶりだった。
 「放浪記」は1月7日にシアタークリエで幕を開け、4月に富山で4日間、5月博多座で1カ月間、10・11月大阪フェスティバルホールで2週間、中日劇場で1カ月間と、61年の初演以来最長の半年間、137回も演じた。「『放浪記』に明けて暮れた1年でした。その中でうれしかったのは男のお客さまが増えたこと。男の方は力が強いので、拍手の音が違うんです」。
 今年の公演から、名物のでんぐり返しを封印したのをはじめ、高齢の森を配慮した演出変更でサポートした。尾道の堤防の場面で上り下りが大変な階段をやめ、さらには部屋で寝っ転がる場面も、首に負担がかかると座ったままに変えた。そんな気遣いに森も演技を深めることで応えた。「台本を読み直して初めて発見したこともある。これまでに見た方には申し訳ないけれど、あのやり方は間違っていたんじゃないかと思うことがある」と今でも新たな演技を模索し「やりたいことはいっぱいあるんです」と続けた。
 一方で週刊誌などに健康不安説も報じられたが、今年は風邪を1度もひかず、名古屋公演の休演日には共演者たちと京都へ日帰り旅行に出掛けた。母の眠る墓にお参りし、紅葉見物もした。「母には『ここまでやれる力を持たせてくれてありがとう』と言ってきました」。
 来年5月の帝劇公演、2000回に向けてすぐに準備に入る。「今年は少しハードな仕事だったので、健康チェックに時間をかけたい」。公演期間中は共演者と一緒に食事したり、本番前に必ず森の楽屋に集まって「茶話会」を開くなど結束は固い。「今日さよならを言った人と再会できる。それがうれしいですね」。森が「戦友」と呼ぶ共演者とともに、5月9日の89歳の誕生日に2000回という大きなプレゼントが待っている。【林尚之】

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