川内原発:3号機増設申し入れ 強い反発と歓迎の声 /鹿児島

1月9日17時2分配信 毎日新聞

 ◇県内世論、二分くっきり
 九電の眞部利應社長が県と薩摩川内市に川内原発3号機増設を申し入れた8日、県庁や市役所では抗議活動をした反対派から強い反発の声が上がった。その一方、歓迎する推進派も。県民世論を二分する増設問題。伊藤祐一郎知事らは、おおむね2年以内に、増設の可否の判断を迫られる。
 ■県庁
 さまざまな反対派が抗議活動などを繰り広げた。
 7日午後から玄関前で座り込みを続ける「反原発・かごしまネット」は、8日午後、県庁正面玄関で演説。橋爪健郎代表(66)は「人口も減少し電力消費が増える見込みのない時代に、環境への影響が懸念される原発の増設は時代錯誤」と訴えた。
 眞部社長が“裏口”から知事室入りしたことで、混乱も。正面玄関から、5階の知事室前になだれ込んだ。
 核廃絶運動団体などでつくる「川内原発増設反対県共闘会議」の荒川譲議長は「大変、姑息(こそく)。環境調査が終わる前での増設申し込みが、後ろめたいのではないか」と怒りの表情で話した。
 また、「原発の危険に反対する県連絡会」(祝迫かつ子代表)も県庁で記者会見し、増設反対の声明を発表。放射性廃棄物を安全に処理できない▽中越沖地震で耐震安全性が揺らいでいる――などと主張した。【福岡静哉、大塚仁】
 ■薩摩川内市
 岩切秀雄市長は午後3時、田中征夫(ゆきお)副社長から申し入れを受けた後、「市民などへ積極的な情報公開を行って、意見や要望が出たら誠実に対応してほしい」と要請。「今後、内容を詳細に分析して検討を進めたい」とした。
 市内では、賛成派と反対派双方から活発な動きも。
 賛成派の田中憲夫・川内商工会議所会頭は「増設に向け本格始動したと思う。不況の中、増設は地域活性化につながるので、議会への陳情などを強力に進めたい。(建設には)地元業者を使っていただきたい、とお願いした」と、歓迎した。
 一方、「川内原発建設反対連絡協議会」の遠嶋春日児・代表世話人は「市民の多くは増設を大変危惧(きぐ)している。準備書の縦覧や説明会で地元住民の反対意見が出るだろう。こんな段階で市長が申し入れを受けるのは許されない」と批判した。【馬場茂、新開良一】
 ◇可否は2年以内か
 伊藤祐一郎知事は8日、九電・眞部利應社長の増設申し入れに対し、是非の回答を保留した。増設をめぐっては、県、市ともこれまで、「調査と増設は別」との「切り離し論」で判断を先送りしてきたが、今回、増設論議は本格的なスタートラインに立った形だ。当面、国への増設申請の前提となる環境影響調査(アセス)を巡る手続きで、賛否双方の論議が交わされそうだ。
 アセスの「準備書」はこの日、国、県と薩摩川内、いちき串木野両市に提出された。九電は、公告・縦覧を「約1週間後」に開始。また、地元住民への説明会を「2月上旬までに実施したい」とした。
 住民はこれらに対し「意見」を出すことができる。反対派の「反原発・かごしまネット」は「独自に実施した環境調査などをもとに、原発の危険性について『意見』を出したい」としている。
 九電は、住民意見や、国からの改善勧告をもとにアセスの「評価書」を作成する。不備が無ければ国が認め、アセスの手続きが完了。増設に向け、次の段階に入る。
 眞部社長は記者会見で、アセス終了前の「準備書」提出段階で増設を申し入れたことについて「住民説明会や公告・縦覧をするのに、増設の意思を示さないというのは、あり得ない」と話した。
 今後、伊藤知事が判断を迫られるのは、アセス終了後、増設申請前に国が県に対して行う意見聴取。知事は「同意」か否かを示すことになる。眞部社長は「11年度には国に増設申請したい」としているため、伊藤知事の判断はおおむね、2年以内とみられる。県議会や市議会でも増設の是非を巡り、議論が活発化しそうだ。【福岡静哉】
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 ◆ドキュメント
 ●午前
10時半   九電鹿児島支店。「反原発・かごしまネット」が、34項目からなる質問状を提出。「文書では回答しない」とする広報担当者に、「県民をバカにするな!」。
 ●午後
 0時半   県庁前。「ネット」の座り込みが24時間を超し、小川美沙子・鹿児島市議(56)は「睡眠時間は5時間だったけど、踏ん張らないと」。
 2時10分 県庁前。「ネット」の集会で向原祥隆事務局長(51)が「九電の社長に直接、抗議を!」。
       薩摩川内市役所玄関でも、反対派市民団体約30人が抗議行動。
 3時前   眞部利應社長が地下から県庁入り。
 3時 5分 県庁知事室。眞部社長が伊藤祐一郎知事に面会。増設を申し入れ
 同 10分 県庁5階の知事室前。反対派市民が詰めかけ、激しいもみ合いに。「ひきょう者!」「帰れ!」と怒号。
 3時    市役所でも、田中征夫副社長が岩切秀雄市長に申し入れ。
 同 48分 岩切市長が報道陣に「原発の意義は大きいという考えは変わらない」。
 4時    九電支店。眞部社長が会見で「2019年度に3号機の運転を開始したい」。
 6時15分 市役所玄関。眞部社長が反対派にもみくちゃにされながら市長室へ。
 同30分  市役所。眞部社長は非常階段から庁舎外へ。
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 ◆3号機増設を巡る経緯◆
92年 2月17日 九電が県と川内市(当時、以下同)に、増設に向けた地質の予備調査を申し入れ
94年12月 7日 土屋佳照知事(当時)が地質予備調査受け入れ表明
95年 2月13日 九電が地質予備調査を開始
96年 9月11日 九電が「開発に支障なし」との予備調査結果を発表
00年 6月12日 川内市議会が環境調査の早期実施を求める陳情を採択
    9月 8日 九電が県と川内市に対し、環境調査実施を申し入れ
   12月 5日 県漁連などが知事と九電社長に、環境影響調査を実施しないよう求める陳情書を提出
01年 1月26日 川内市の森卓朗市長(当時)が環境調査に同意
    4月 6日 須賀龍郎知事(当時、以下同)が、環境調査の受け入れに「回答留保」
03年 5月16日 須賀知事が、環境調査の受け入れに同意。「調査と増設は別」として
   10月 1日 九電が環境調査を開始
05年 1月27日 県漁連などが海域調査を含む環境影響調査(環境アセスメント)に同意
    2月 8日 九電が環境アセスに着手
08年12月24日 九電が、増設を09年1月に県と薩摩川内市に申し入れると表明
          岩切秀雄市長は「安心安全の確保」の条件付きで「容認」と発言
09年 1月 5日 伊藤祐一郎知事は「時間をかけて検討する」
    1月 8日 九電が県と市に3号機増設を要請。環境アセスの準備書も提出

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