磐田は9日、静岡・磐田市内のクラブハウスで、元日本代表FW中山雅史(42)に対し、来季の契約を延長しないことを通告した。前身のヤマハ発動機時代からの生え抜きで磐田の看板選手だが、若返りを目指すクラブの方針から、戦力外となった。中山はアドバイザー就任を打診されたが、現役続行を強く希望。移籍先を探す方向だ。また、元日本代表DF鈴木秀人(35)も戦力外通告を受けた。
“磐田のゴン”が、ついに終幕を迎えることになった。この日サテライトの練習試合に45分間出場した中山は、治療を終えると、磐田の吉野社長らに呼ばれ、クラブハウス2階の応接室に入った。約40分後、中山は「なんとなく分かっていたからね」とサバサバした表情で階段を下りてきた。
クラブからは現役選手以外の形で残留するよう強く要請された。吉野社長は「チームとして新しい方向へ進む時期。功労者の中山君、(同じく戦力外となった)鈴木(秀人)君には感謝しているが選手としては契約できない」とし、磐田の営業活動や後進の指導など幅広く活動するアドバイザーのポストを用意した。
だが中山は「(現役を)辞めて何をしたらいいかと考えると、やはりサッカーをやること以外に興味はない。クラブからの話はありがたいが、アドバイザーは(元日本代表MF)名波もいるんじゃ(気の利いた)アドバイスなんてできないよ」と独特の言い回しで、揺るがない現役続行への気持ちを明かした。
筑波大卒業後の90年に当時日本リーグのヤマハ発動機入り。磐田が93年のJリーグ元年に昇格できないことが決まっても残留し、1年間はJFL(当時の2部)でプレー。その年に日本代表で「ドーハの悲劇」を経験した。磐田での選手生活は今年がちょうど20年目。その間J1最多の157ゴールを含め公式戦のゴンゴールは219。42歳になった今季もその人気は衰えず、個人グッズの売り上げはチームトップを維持するなど、磐田にとってはまさに至宝だ。
今季公式戦出場はここまでナビスコ杯、天皇杯各1試合だけ。柳下監督は「(中山は)体に痛くないところはない」と満身創痍(い)であることを強調し「体がボロボロになる。心情的には引退してほしかった」とも話した。現時点で更新の可能性があるJ1最年長得点と同出場記録は、まだ実現していない。
中山は「きれいに終わるのは、ここ(磐田)で終わることだと思う。でも僕の現役を続けたい気持ちとクラブの考えはギャップがある。さすがに1年間浪人はできないけど来年の開幕まではオファーを待ちたい。来ないならトライアウトの受験も検討する。自分の気持ちを貫く」。今後は自身初の代理人を立て、42歳での移籍成立を目指す。
<残りの公式戦特別扱いせず>柳下監督はリーグ戦残り3試合、天皇杯でも中山を特別扱いしないことを決めた。中山にはJ1最年長得点記録がかかっているが「特別なゴンの枠があるわけではない。ここまで来たので、今季のスタイルを変えたくない」と話した。今季のホームのリーグ戦は28日の広島戦(ヤマハ)だけ。同監督は「その間にアピールしてもらい(ベンチ入り)18人に入ったら、試合展開によっては考えたい」と含みも残した。(スポニチ)