博多座で躍動生きる力

■いじめ・戦争・・・「ハードル」越え
 いじめをテーマにした小郡市の市民ミュージカル「ハードル」が、福岡市の博多座に進出する。2007、08年に上演され、地元で反響を呼んだ作品だ。「もっと多くの人に見てほしい」と12、13日の本番に向け、約120人の出演者たちのけいこも熱を帯びている。(上山崎雅泰)

 「くっつきすぎ。舞台は広いから間隔を考えて」「動きをもっと大きく」。今月4日夜、小郡市の生涯学習センターであった通しけいこで、演出家の厳しい声が飛んだ。

 ミュージカルは同市内の音楽関係者らでつくる「小郡音楽祭実行委員会」の主催。メンバーは同市を中心に近隣の久留米市、福岡市、佐賀県鳥栖市などからオーディションで選抜された小学4年生から66歳までの70人と、ダンサー47人が加わる。今回の舞台のために6月から毎週末、けいこを重ねてきた。

 ミュージカルは、児童書「ハードル」「ハードル2」(青木和雄・吉富多美著)が原作。主人公の少年、有沢麗音(レ・オン)が転校先の中学校でいじめにあい、非常階段から突き落とされ生死をさまよう。学校側は事故と判断するが、生徒から真実を求める声が高まる。曽祖母から「大事なものを守るため声をあげればよかった」と戦争体験を打ち明けられ、麗音は生きる力を取り戻していく……。

 物語はいじめや家族愛、友情、差別、戦争など様々な問題が絡み合って展開されていく。過去2回の上演とも会場になった小郡市文化会館は満員で、入場を断った人も出た。上演後に出してもらったアンケートには「もう一度みたい」「ぜひ来年も」といった要望が多数寄せられ、反響の大きさから「それならもっと広い舞台で」と博多座での公演を目指した。

 九州を代表する劇場の博多座は開演以来、毎年12月は「市民檜(ひのき)舞台の月」として市民公演を受け入れている。ハードルは過去の実績など厳しい審査にパスし、舞台に立つことができた。

 主人公の麗音を3年連続で演じる明善高校1年、佐伯綾香さん(16)は今年6月、博多座で歌舞伎を鑑賞したといい「広さに緊張すると思うけれど、最初で最後だと思うから伸び伸びと演じたい」と話す。

 13日には特別ゲストとして吉田宏・福岡市長が市長役で登場する予定だ。自らも曽祖母役で出演する総監督の山崎三代子さん(55)は「脚本も見直してバージョンアップした。差別や戦争問題をもっと深く考えるきっかけにしてもらえれば」と話している。

 公演は12日午後5時半、13日午後2時の2回。チケットの問い合わせは小郡市文化会館(0942・72・3737)へ。

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