川口組欧州覇者として五輪へ/フィギュア

<フィギュアスケート:欧州選手権>◇2日目◇20日◇エストニア・タリン

 昨年初めにロシア国籍を取得した川口悠子(28)が、アレクサンドル・スミルノフ(25)と組んだペアで、初優勝を果たした。ショートプログラム(SP)で2位につけ、フリーで1位となり、合計213・15点で逆転。フリーの139・23点は世界最高、合計得点も世界歴代2位というハイスコアで欧州覇者の座に就いた。バンクーバー五輪に金メダル候補として乗り込む。

 ロシア語で受けた場内インタビューの最後に「スパシーボ」と感謝した後、日本語で「ありがとう」と付け加えた。1891年から始まった欧州選手権は、世界選手権より長い歴史を持つ伝統の大会。日本出身選手で初のチャンピオンに輝いた川口は「初めての人になったのはうれしい。五輪でも初めての人になりたい」と間近に迫ったバンクーバー五輪に目を向けた。

 ロシアの隣国エストニアの首都タリン。客席では数多くのロシア国旗が振られ、熱い声援を送られた。「観客がエネルギーをくれた。スタンドと一体になれた」。息の合った演技を終え、取材エリアで質問に答えている最中にライバルの得点が表示された。逆転優勝が分かると、思わずスミルノフに飛び付いた。

 ジュニア時代はシングルの有望選手。98年長野五輪を見てペアにあこがれ、ロシア人の名コーチ、モスクビナさんの弟子になったが、道のりは長かった。パートナーに恵まれず、4年前にようやくスミルノフとめぐり合った。「悠子はすごい努力家で、こんなパートナーはなかなかいない」と相手が舌を巻く練習熱心さで、実力をつけた。国際スケート連盟(ISU)が主催する選手権大会は、異なる国籍の選手によるペアの出場を認めており、一昨年から3位、2位と階段を上がってきた。

 旧ソ連時代の64年インスブルック大会から、ロシア勢は五輪のペアで12連覇中だ。表彰台の真ん中で聞いたロシア国歌を「次は聞くだけでなく、歌えるように覚えておかないと」。伝統国の代表という重責を担う28歳の顔に自覚が浮かんだ。

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