東京の鉄道遺産たどる

◇20年かけ元都立高校教師が上下本

 鉄道ファンの元都立高校教師、山田俊明さん(60)=八王子市=が、都内の鉄道に関する歴史的建造物を紹介する「東京の鉄道遺産 百四十年をあるく」を出版した。自ら訪ね歩いて約20年。東京駅丸の内駅舎や上野駅など代表的な建築物から、れんが造りの高架橋など見慣れた風景にとけ込んだものまで多岐にわたる。
(岩城興)

◆建築物から廃線跡まで

 山田さんは、子どものころ栃木県のJR宇都宮駅近くに住んでいた。「目の前の駅が全国につながっていた。鉄道が人や街どうしを結んでいると思うとロマンを感じた」。鉄道好きになり、1980年8月、30歳の時には国鉄(現JR)と私鉄の全線乗車を達成した。

 教師時代の専門は社会科(地理)。近年、近代化を支えた産業遺産が注目されるなか、産業考古学会に参加。自分の好きな鉄道分野を調べてみようと、約20年前から都内を歩き出した。

 著書は上巻が、明治から昭和初期ごろまでの「創業期」、下巻がそれ以降の「発展期」。鉄道創業の地、品川・新橋周辺や、多摩地区最初の鉄道・甲武鉄道(現中央線)、戦後の一時期に三鷹駅から北側に延びていた通称「武蔵野競技場線」の遺産などに触れる。立川―日野間の多摩川橋梁(きょう・りょう)(上り線)には、約120年前のれんが積み橋脚などが現在も使用されている。一方、廃線になった路線のレール跡が街中にあったり、敷石が寺の参道に使われていたりと、意外な形で残っていることも。

 山田さんのお勧めは東京メトロ銀座線。駅の出入り口一つをとってもデザインに特徴がある。浅草駅の吾妻橋近くの出入り口には「地下鉄出入口」の文字を図案化した飾り格子があり、稲荷町駅では柱の上部を階段状にせり出させるなど凝っている。

 全巻を通し、町歩きの一助にと各項目に地図を掲載。山田さん自身が40年以上前に撮った駅や蒸気機関車などの写真も使った。山田さんは「鉄道ファンでなくても、本を片手に歩き、東京の近代化に貢献した鉄道遺産の価値を知ってほしい。それが保存につながっていけば」と話している。

 四六判。各巻1400円(税別)。問い合わせは、けやき出版(立川市、042・525・9909)へ。

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